2011年4月25日月曜日

三つの箱から世間を覗く(第62回)

「第57回の質問に答えたい」

【質問】もし、あなたが総理大臣・東電社長なら、どのように被災者を訪ねますか?

これに、竹田君、太田君、中村君、近藤君の4人が答えてくれた。ありがとう。

(1)まず、4人の答から紹介したい(解答の要点部分のみ)。

○姿勢・伝え方について
「責任ある立場として、自分の非を認め、誠心誠意謝罪する」姿勢を見せる
返答に口ごもって答えられないなんてことはあってはならない。
 伝える内容について
「代表として覚悟を決め、全身全霊をかけて力を尽くしたい」
具体的な今後の方針等を述べることは難しい。よって、謝罪文と今後の姿勢を伝える。(竹田君)

○この責務から逃れることなく必ず全うするとの強い決意を示す
被災地を復興し、避難者の生活を元通りにするまでの方向性を説明する
ことくらいしか思いつきませんでした。(太田君)

○まず考えられるのは、実際に行われたように被災者一人一人に向かって声をかけることですが、
映像を見る限り菅総理は全くの無策であったように思います。
 場当たり的に対応して何十何百と言う人に対して好感を残そうということは、非常に高度な力を要すると思います。
「何を、どのように伝えるか」を明確にしない限り、この手段が奏功することは難しいでしょう。
別に考えられるのは、全体に向かって演説(スピーチ)などで言葉をかける時間を設けることでしょうか。
自分が「何をしに来たのか」を明確にすることがまず必要だと思います。(中村君)

○避難所を訪問する意味・目的を考えると、以下の2点が浮かびました。
①自分の目で見ることで、状況を確認する(何があって、何が足りないかを把握する)
②被災者の方々を勇気づける

そしてそのために具体的に何をするか。
まずは、被災者の生活している現場と生活環境を確かめることです。
それには、実際に注意深く見て回ることに加え、直接話を聞く、ということがあります。

また、勇気を与えるためには、そこにいる全員と直接話をし、
どのように対応するか、現状ではどうなっているのかを説明すべきだと思います。
もし、一人一人と話すことが不可能であった場合なら、複数人ずつのグループを
回り、全員と少なくとも会話することができたのではないか、と思います。(近藤君)

(2)正解がない問題なんだが、いずれも「間違い」ではない、「なるほど」ではないか?
ある答えを出した人も、他の答を間違いだとは言うまい。
にもかかわらず、菅総理も清水社長も「正解」を選べなかったのは、なぜだろうか?
君たちは、彼らの立場だったら「正解」を選べるだろうか?

彼らも馬鹿ではない。助言してくれるスタッフもいるだろうに、なぜ?

私は、謝罪なり、説明なりするにあたっての「心」作りが重要だと思う。
被災者の心情にどれだけ寄り添えるか、
被災者の心情と「共感」できていれば、
謝罪も、説明、説得、激励、何でも来いになるだろう。

では、どのようにすれば、被災者の心情と「共感」できるようになるであろうか?
そのヒントが両陛下なのである。
両陛下は、被災者に「心から」共感できている、しているから、被災者の心を打つ。
勿論、我々が両陛下のような人格、心掛け・心持ちなどを持ち得るはずもない。
だが、両陛下が園遊会などで招待客に遭うに当たって、相手のことを聞いてから会う、と聞く。
自分のことをそこまで知っていていただいているのか、と感激するという。
また、陛下は、常日頃から国民のことを心がけていると聞く。
だが、我々凡人は、自分と周りの人のことしか考えず、
謝罪に行く時も、「謝罪」せねばならぬからであり、
それは強制されたものであり、
相手その人に会いに行くわけではないのだ。

そんな私なら、まず被災地を訪れたい。
その地の有様を「心」に刻み付けてから、被災者に会うことにしたい。
被災者が生まれ育った土地、それがいかに変わり果てているか、
それを見ることにより、
被災者の悲しみや苦しみを「共感」することが、少しは可能にはならないだろうか?

その「心」から出てきた言葉は、被災者の心に少しは届かないだろうか?
被災者を無視して通り過ぎるようなことはすまい。
(もし、自分だったら、どんな風に言うか想像してご覧。言葉が浮かんでくるぜ。)

以上、どうだろうか?
私は、この答えが浮かんだ時、
思わず、「どや顔」になってしまったのだが…。

(3)「訪問時期」についても触れられており、非常に重要な点だが、紹介にとどめておく。
○伝える時期についてですが、もう少し早い段階で訪れるべきであったと思います。
せめて、震災1週間後には国民の前でトップが伝えるべきではないでしょうか。
信頼は迅速な対応と姿勢によって築かれると思います。 (竹田君)

○これが震災直後に訪れるのであれば、誠心誠意お詫びする姿勢を示すだけでも
まだ許されるかもしれません。
しかし、事故から1か月以上を経過した時期にトップが訪問する際には、
民間企業間のクレームに置き換えて考えてみましても、納得性の高い
原因分析と再発防止策、そして補償内容が十全に用意されていない限りは
門前払いされても致し方ないかと思われます。(太田君)

3 件のコメント:

  1. 中村(20期)です。
    「なるほど!」と膝を打ちました。

    総理の言葉がどうしても軽く感じてしまうのも、「心」の有無といえるのかもしれません。
    そういった「言葉の力、重み」に敏感になっていき、そして自分自身でそれを操れるようになっていきたいです。
    また、ドラッカーを読み、リーダーが「高潔」であることの重要性を学んでいたのにも関わらず、自分が「心」というキーワードを全く出せなかったことを恥じたいです。
    またコメントを残し、学んでいきたいと思います。

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  2. 中村貴治(20期)2011年4月26日 2:04

    中村(20期)です。すみません、連投します。

    先生のお話を聞いて、スピーチにおける「エピソード」に思い当りました。
    菅総理がすべきことは、言葉を伝える前に被災者との「共感の下地」を作ることであり、それによって「心」のコミュニケーションができるようになるということだったと思います。
    スピーチでエピソードを語るということは、語り手と聞き手との間に「擬似的な共感の下地」をつくるということなのかもしれません。それによって、語り手と聞き手の「心」のコミュニケーションが出来上がるということだったのかもしれません。
    「言いたいことを直接ではなく、迂回的に伝えた方が良く伝わる」というコミュニケーションの構造も面白く感じます。まだ上手くまとまっていない感がありますが、いつか「刮目」で皆に聞かせたいと思います!

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  3. 太田(3期生)です。
    両陛下との差異から考えてみよとのヒントをいただきながら、
    意識的に共感する”「心」作り”という視点には気付きませんでした。
    もちろん両陛下の被災者を思うお心には遠く遠く及ばないにせよ
    凡人が少しでもそのお心に近づきたいと思うならば有効な方法だと思いました。

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