2011年4月23日土曜日

三つの箱から世間を覗く(第59回)

「言葉の重さ、何を伝えるのか? ~風評被害をもたらすもの~」

(前回に続いて、2011.4.23の朝のNHKニュ-スから。)

○校舎が流され何一つ残っていない高校を見ている高校生。
「将来、親と一緒に漁に行けたらいいなとおもう」
と語っているのを、画面下部の文字では、
 A.「将来、親と一緒に漁に行けたら」

と表示していた。
私は、この省略の仕方は適切ではない、と思う。
(省略自体は「仕方がない」としておこう。一々文字にすることの是非はある。)

私なら、次のようにする。
 B.「将来、親と一緒に漁に行きたい」
 
Aのように表記してあると、
この高校生が、近年よく聞く、
最後まで言わず、語尾をあいまいなしゃべり方をしているように受け取られる。
これでは、「正確な」報道の役目を果たせぬだけでなく、
このような「尻切れ話法」の教育・伝播を助長することになる。
(「標準語=共通語」は学校教育と共に、
NHK、TVにより共有された。
言葉遣いはともかく、イントネーションはラジオ・TVが決定的であろう。
「関西弁」や、去年の「…ぜよ」を想起されたい。)


「煩いことを言うなぁ…。意味が通じればいいんだろ。」
という「声」が聞こえてきそうだ。

「そう!意味が通じなければいけない」のだ!
だから、Bである。
高校生は、インタビュ-に戸惑って、口籠りながら語ったのではない。
「将来、親と一緒に漁に行けたらいいなとおもう」と彼は強く言ったのだ。
しっかりと心に抱いている「思い」を、しっかりとした口調で彼は語った。

だから、Bの「将来、親と一緒に漁に行きたい」が、
短縮した時の、「正しい」伝え方ではあるまいか。

映像メディア(特にTV)は何よりも「人目(視聴者)を惹く画」を撮ろうとする。
だから、被害者・被災地にハイエナ・禿鷹のごとく群がり、
加害者・被害者少年・少女の昔の写真・文集をどこからか持ってくる。
だが、その「人目を惹く目玉映像」だけでは、
「何」は伝わっても、「なぜ」や「今後」はわからない。
だから「解説・コメント」が必要になる。

TVは画像・映像と言葉の助けを必要としている。
「事実」とは「現象」+「意味」であろう。
「意味」を「正確に」伝えるためには、
言葉を「適切」に使う力・心掛けが必要なのだ。

○今やっている番組で、
「被災地産の野菜を食べよう」
「風評被害を吹き飛ばせ!」と言っている。

「風評被害」地は「被災地」だろうか?
福島県は全県が放射能汚染されているわけではない。ごく一部だ。
「被災地」が受けた「災害」は何なんだ?
「災害」を受けていない土地を「被災地」と呼ぶ。
これこそ「風評被害」じゃないか?
「風評被害を吹き飛ばせ!」という番組が、
放射能汚染されていない土地を「被災地」と呼べば、
避ける人が出てくる。

「被災地産の野菜を食べよう」の
「被災地」の「災害」とは「風評被害」じゃないか!!??
「放射能汚染」という「災害」を受けているなら、
その野菜は食べてはならないのだから。

自分たちが「風評被害」をまき散らしていることに気付かない鈍感さは、
日ごろからの「言葉遣い、言語感覚」の杜撰さから生じる。
(「差別語」にやたら敏感なマスコミ。
彼らがその言葉を使わないのは…。)

2 件のコメント:

  1. 太田(3期生)です。
    風評被害に関する報道は、余程慎重に行わなければ先生のおっしゃるように自分たちが
    風評被害を撒き散らすことになる危険性があります。
    数年前にあっという間に廃止に追い込まれた「炎上中のブログをお知らせするサイト」
    同様に興味本位に終わることになるかもしれません。

    数年前の平成18年末の宮崎県における鳥インフルエンザ発生の際、農林水産省は
    科学的根拠に基づかず無闇に宮崎県産の鶏肉・鶏卵に関し不安を煽る(それに
    よって自らの安全性を強調する)表示を行なっている小売業者を全国的に注意し、
    是正していました。
    この動きはもっと評価されて良いと思うのですが、当時のテレビでの報道では、
    ○宮崎県産の鶏肉・鶏卵を店舗から撤去する小売店
    ○売り先がなくなり途方に暮れる養鶏業者
    を映し出すにとどまっていたように記憶しています。
    もっとも報道すべきは、下記に転載する農林水産省プレスリリースの最後の一文で
    あると思うのですが、それではセンセーショナルでも何でもないので視聴率を
    取れないのでしょう。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    平成19年1月29日農林水産省プレスリリース
    鳥インフルエンザ発生に伴う小売店舗における鶏卵・鶏肉の不適切な表示に関する
    調査状況について(第3報)」より以下転載。

    撤去・修正を要請した不適切な表示は、
    「今回発生した鶏農場との取引はしておりません。」
    「宮崎県で発生した高病原性鳥インフルエンザ発生地区移動制限10km区域内の鶏肉は
    取り扱っておりません。」
    「当社で販売している卵は、鳥インフルエンザの感染がない○○県産の卵です。」
    「当店で販売しております鶏肉は、今回の発生地域のものは一切取り扱っておりません。」「当店が販売しております鶏肉、鶏卵は、発生農場から50km離れており安心です。」
    等の内容のものがありました。

    鶏卵や鶏肉を食べることにより、鳥インフルエンザが人に感染することは、
    世界的にも報告されていません。

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  2. 太田(3期生)です。
    風評被害に関する報道は、余程慎重に行わなければ先生のおっしゃるように
    自分たちが風評被害を撒き散らすことになる危険性があります。
    数年前にあっという間に廃止に追い込まれた「炎上中のブログをお知らせ
    するサイト」同様に興味本位に終わることになるかもしれません。

    数年前の平成18年末の宮崎県における鳥インフルエンザ発生の際、
    農林水産省は科学的根拠に基づかず無闇に宮崎県産の鶏肉・鶏卵に関し
    不安を煽る(それによって自らの安全性を強調する)表示を行なっている
    小売業者を全国的に注意し、是正していました。
    この動きはもっと評価されて良いと思うのですが、当時のテレビでの報道では、
    ○宮崎県産の鶏肉・鶏卵を店舗から撤去する小売店
    ○売り先がなくなり途方に暮れる養鶏業者
    を映し出すにとどまっていたように記憶しています。
    もっとも報道すべきは、下記に転載する農林水産省プレスリリースの最後の
    一文であると思うのですが、それではセンセーショナルでも何でもないので
    視聴率を取れないのでしょう。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    平成19年1月29日農林水産省プレスリリース
    鳥インフルエンザ発生に伴う小売店舗における鶏卵・鶏肉の不適切な表示に
    関する調査状況について(第3報)」より以下転載。

    撤去・修正を要請した不適切な表示は、
    「今回発生した鶏農場との取引はしておりません。」
    「宮崎県で発生した高病原性鳥インフルエンザ発生地区移動制限10km区域
    内の鶏肉は取り扱っておりません。」
    「当社で販売している卵は、鳥インフルエンザの感染がない○○県産の卵です。」
    「当店で販売しております鶏肉は、今回の発生地域のものは一切取り扱って
    おりません。」
    「当店が販売しております鶏肉、鶏卵は、発生農場から50km離れており
    安心です。」
    等の内容のものがありました。

    鶏卵や鶏肉を食べることにより、鳥インフルエンザが人に感染することは、
    世界的にも報告されていません。
    (2011/4/24 23:34)再投稿

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