2011年5月23日月曜日

三つの箱から世間を覗く(第85回)

「海水注入55分間の中断を巡って」

菅首相が「福島原発1号炉の海水注入の中止を命じたため、
55分間の中断が生じ、その間燃料棒の溶融が進んだのではないか?」
と、予算委員会で谷垣自民党総裁が質したところ、
菅首相は、「そのような事実はなかった、何よりも海水注入を聞いていない。」と答えている。

谷垣は、「なかった」と聞いて、それ以上、この問題の追及をしていないようだが、
(TV局は、それ以後の質疑を全く報じないので残念ながらわからない。)

「何よりも海水注入を聞いていない。」という答えに対して、
○では、誰が海水注入を決定・命じたのか?
○そのことを調べたのか?
○「聞いていない」と言うが、聞いていなくてはいけないのではないか?
 自分のところまで情報があがっていないことを、調査・問題にしたのか?
○そもそも、海水注入を決定したのは、現場の所長だという。
 これは、最高責任者たる総理が決断すべきことではなかったのか?
○以上の諸点をきちんと確認していないとしたら、
 あなたは必要な情報を持たずに、適確な決定ができない、
 ということになるのではないか?
 あなたは、この原発事故対策の最高責任者としては不適格である!

と、なぜたたみ掛け、追及していかないのか?

形としては、「責任追及」をしているようだが、
動機・内実は「あら捜し、咎めだて」なのだろう。

何があったのか?何をしたのか?という「事実」を明らかにすることを求めていない。
「事実」を明らかにすることにより、自ずから「責任問題」が明らかになるのではないか?

相手を「否定する」ことだけに終始する姿勢からは、
「責任問題」は明らかにならず、
また、そのような人間が、きちんと「責任」をとることができるとは思えないのだが…。

この「あら捜し、咎めだて」は、野党だけでなく、
事実を明らかにすることが仕事のマスコミ(特にTV)もまったく同じだ。
「あら捜し、咎めだて」されるばかりだから、
政府も東電も隠す。

そして、TVは事実を明らかにせよ、と言う…。

1 件のコメント:

  1. 太田(3期生)です。
    問題の本質は全く変わっていないのですが、コメントを書き込むのが
    遅れている間に「空白の55分間」に関する情報が一変してしまいました。
    時事問題はタイムリーに反応しないといかんです。

    5月27日の報道では、社内の協議で中断を決めたものの、第一原発所長が
    冷却による安全確保を優先し、注水継続を判断したということであり、
    実際には「空白の55分間はなかった」と改められておりました。
    この件では先生がご指摘されている
    ”これは、最高責任者たる総理が決断すべきことではなかったのか?”
    という問題も含め、廃炉になるリスクを覚悟でメルトダウンを未然に
    防止するとの極めて重要な意思決定に関し、その指揮命令系統が
    不明瞭であることに驚きを覚えました。

    指揮命令系統のあいまいさ、責任所在の不明瞭さを象徴するのが、東京電力
    武藤副社長が会見で語った
    ”(官邸にいる元役員から東電本店に)首相の判断がなければ、海水注入
    できない雰囲気、空気を伝えてきた”
    との説明です。
    「雰囲気、空気」とは誰なのかよく分かりません。
    飛躍が過ぎるかもしれませんが、この問題は東京電力に限ったものではなく、
    日本語の特性によるところも実は大きいのではないかと思いました。

    「いかがなものか」(「難色を示す」が、明確な否定の主張ではない。)
    「○○させていただく」(「指示を承る」でも「(私が)する」でもない。)
    いずれもおそらく英訳は不可能な表現であり、行為の主体が不明瞭です。
    私は「お茶が入りました」(主語が「お茶」!)、「お風呂が沸きました」
    (主語が「お風呂」!)等の恩着せがましさのない奥床しい日本語が
    大好きであるのですが、緊急時の重要な意思決定においてはこの美しい
    特性が命取りとなる可能性もあるように感じます。

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