2011年5月10日火曜日

三つの箱から世間を覗く(第73回)

「浜岡原発停止要請に対するTV局の姿勢」

菅首相の浜岡原発停止要請に対して、「思いつき」という批判を
各局のニュースショーで何回か聞いた?
この批判に関して。

Ⅰ.
①「思いつき」か?
 浜岡原発の危険性は、かねてより、どの原発より危険だ、と指摘されていた。
 今回の福島の直後にも、すぐ問題となったし、
 3.11のあとすぐに静岡県東部で起こった地震のとき、
 関係者は、みなヒヤッとしたと思う。

②菅首相の自分の人気取りのためにやったことだろう、
 という解釈・推測(・邪推)に立てば、
 「思いつき」という評価も出よう。

③だが、仮に「人気取りのパフォーマンス」だとしても、
 浜岡原発を放っておいていいのだろうか?
 絶対にすべき「対応策」ではないのだろうか?

④浜岡原発停止が、無駄なこと、すべきことでないことならともかく、
 すべきことであるなら、支持し、評価すべきではないのか?
 それを「貶す」だけなら、彼に期待していないということになる。
 
⑤期待されず、良いこと・すべきことでも、
 「思いつき」「人気取り」と言われれば、
 彼の今後に、どれだけ期待できるであろうか?
 実に「無責任で、罪深い」報道である。

Ⅱ.
⑥角度を変えてみよう。
 TV局は、「浜岡原発停止を必要ない」と、思っているのではないか?
 という「仮説(解釈)」に立ってみよう、というものである。

⑦浜岡原発の地元を取材して、
 いかに、財政・雇用・商売で原発に依存しているか、を流す。

⑧もし、浜岡原発を停止したら、電力供給はどうなるんだ?
 東京電力(関東)に電力を回すことはできなくなる。
 とコメントする。

⑨「なるほど!」TV各局は(見る限り)、
 「浜岡原発を停止すると困ることが沢山出てくる」という主張だ。
 「浜岡原発停止に反対している!!」のだ。

⑩それなら、菅首相の「英断」にケチをつけるよなぁ…。

Ⅲ.
⑪彼らは、本当に「浜岡原発停止に反対している」のだろうか?
 まさか、そんなはずもないと思うのだが…。
 少なくとも、「意識的に、意図的に」反対はしていない、と思う。

⑫この「矛盾」は、TV局がこう考えているから、としか考えられない。
 「駿河湾での巨大地震なぞ起こらない」(と思う)、
 「だから、原発事故は起こらない」のだから、
 「経済・電力問題を優先すべきではないか」
 「菅首相は、不必要な浜岡原発停止を打ち出した」
 「思いつきの、パフォーマンスだ!」

⑬原子力安全委員会や原子力安全・保安院と「同じ」なのだ。
 この二つの組織は「安全を職責」としていたが、
 「推進>安全」に立ってきており、
 事故後も、福島第一原発以外の安全性については、一切口にしない。

⑭「経済、財政、雇用、電力、便利、快適、…>安全」
 という図式が問われていることは、はやもう忘れ去られた。
 まあ、簡単に忘れられるほど、小さい声でしか語られなかったのだが…。

⑮別にTV局や安全委達だけではあるまい。
 国民みんな、同じじゃないのか?
 だって、「前科」がある新潟柏崎刈羽原発には7基。
 敦賀・美浜のには、13基。
 玄海、福島第二には、各4基づつ。
 泊、女川、伊方には、各3基づつ。
 そのほとんどは、大地震がすぐそばで起こった所だ!
 住民たちは、みな黙っているようだ。
 
⑯いや、大地震なぞ、めったに起こらない。
 今回だって、「想定外」の規模で、「想定外」の津波がなければ…。
 
⑰「想定外」で「大災害」なんだが…。
 テロリストが小型機で突っ込まなくったって、
 航空機事故でもなんでもいい。
 「想定外」の例を列挙するのは、虚しい…。

⑱「悪いのは東電(電力会社)」と一貫して世論は形成されてきた。
 (菅政権は、事故後の対応が悪いだけ。
 国策として推進してきた自民党もおかまいなし。)
 「安全性」は電力会社の「責任」だ。
 他のものは「知らない」でいいんだ、と思っているんだろう。

⑲だが、「原発選択・依存」とは、
 何を選んで、何を危険に曝しているのか、気付いていないんじゃないか?

 まさかね!
 福島第一原発で今も放射線・放射性物質が漏れ続けており、  
 住宅地・農地・海・海産物などなどに蓄積され続けており、
 周辺の住民は、今現在、避難生活を続けている!!

 私たちは、毎日TVで見聞きしているのだが…??
 何よりも、TV局は、避難所・避難民のニュースを毎日のように流しているのだが…???

⑳凄まじいなぁ…。
 どうか、「想定外」のことが起こりませんように…。

(付)先ほど、中電が停止を決定した、と聞いた。
 TV局は「首相の要請には断れなかった」など、と言っている!!
 
 「もし」が起こったら、中電はどうなるのか?
 停止要請があったのに、拒否して、「もし」が起こったら…。

 考えるだけでも恐ろしい。
 首相が止めろ、というのだから、
 「ラッキー」と思ったに違いない。


 だって、東電と違って、政府の命令による「電力不足」だし、
 収益が悪化したって、政府に従ったからです、と株主にも言える。
 ではなぜ、すぐ要請に応じなかったのだろうか?

 それは、「検討したという事実」を「株主総会」のために用意したのさ…。

(付2)最初書いた時に、触れねばならないことがあった。
 「私企業に首相が"命令"できるのか?」という問いをTVは出さない、
 という問題である。
 推測するに、「原発は国策」、
「電力会社の自主的判断で原発推進しているわけではない」から、
「止めるのも政府の指示で…」と、
 どこかで、メディアも国民も思っていないか?

 だが、これは錯覚だが、「本質」ではないか?
 首相に「停止を命じる権限」があるのか?
 という問いは、「法律的」には正しいかもしれないが…。

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コメントを付けてくれている諸君には、心から感謝している。
おかげで、「白熱教室」も出現した!

できたら、みんな一言でいいから、何か書き残してくれないか。

1 件のコメント:

  1. 太田(3期生)です。
    私も浜岡原発停止要請に対する報道については疑問を感じました。
    熟慮の末なのか、根拠は明確であるのか、といった論調が主流の
    ように見受けられましたが、東海沖地震については既に警戒宣言発令
    から交通規制、避難に至るまでの詳細かつ綿密なシミュレーションが
    繰り返されております。
    浜岡原発は東海沖地震における「地震防災対策強化地域」のほぼ真ん中に
    位置することから、今更熟慮もないのではないか、と感じております。

    (可能性自体は高くないので)任期中にさえ問題が起こらなければ、と
    問題を先送りにするのがもっとも安直かつ無責任な対応であり、今回の
    停止要請は英断として評価すべきものと考えます。

    評価すべきことに対して評価せず、のべつ幕なしに非難するのでは野党の
    野次とあまり変わりありません。報道機関には常に批判精神が求められ
    ますが、否とすることと批判とは異なります。
    私は為政者には敬意を持つべきであり、それだけに為政者には責任が
    あると考えるのですが、あるべき像との乖離に基づく批判とは言い難い
    報道により、子供ですら為政者に対する敬意がなくなっていることに
    懸念を覚えます。

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