2011年5月12日木曜日

三つの箱から世間を覗く(第76回)

「新宿三越アルコット店の閉鎖」

新宿三越アルコット店が閉鎖し、Big Cameraに変わるという。
(これまでも、三越がヤマダ電機に、吉祥寺三越がヨドバシカメラにと、三越の店舗は家電量販店に変わっている。)

その記者会見の席で、社長は言う。
「この"物件"については、社内でもいろいろと議論が…。」

そうか、80年の歴史のある、お客たちにも愛着のある建物なのだが、
経営者たちにとっては、単なる「物件(モノ)」でしかないんだ!
愛情も愛着もないんだ!?

それじゃ、営業不振にもなるはなぁ…。
「楽しい買い物をしていただく場」が、
単なるモノで、コスト計算の対象でしかないのだ。

「安い!」なら、Big Cameraやヤマダ電機だよなぁ…。
「楽しい!」「リッチ!」という「気分」をサービスするのがデパートじゃないのだろうか?
「モノを売買するだけの場」ではなく、
「お買い物を楽しむ場」がデパートではないのだろうか?

新宿三越アルコット店を調べてみると、
「アルコット店の前身である三越新宿店は1930年に開店した老舗。
2005年に専門店(LOUIS VUITTON、Tiffany & Co.、Gap、ジュンク堂書店など)を集めたファッションビルとして業態転換していた。
売り場面積は約2万平方メートル。11年3月期の売上高は114億8500万円。」
(http://www.sponichi.co.jp/society/news/2011/05/12/kiji/K20110512000807040.html)
なるほど、なるほど…。

商品納入業者に店頭に立たせ、販売員を務めさせる。
それは、家電量販店のやることだ。
店員が客と接していなければ、
客のことは、何を何個買った以上のことはわからない。
売上高とコストの2つ。単なる「場貸し」だ。

だから、私は数年前の「経営統合」は、
「コスト削減」目的である限り、
それによる、百貨店の復活はあるまい、と思っていた。

「焼き肉えびす」と同じ。
「事業規定:わが社は、何をお客に提供するのか?」
をきちんと考えていない、としか思えない。

いや、それ以下だろう。
「顧客規定:わが社のお客は誰(何を求めているのか)?」
「焼き肉えびす」は、「安く焼き肉を食べること」を求める客に応えようとした。
じゃ、デパートは何・誰を?

「焼き肉えびす」は、従業員のモチベーション・アップに相当力を入れていたという。

どう見ても、言っちゃ悪いがチンピラみたいな勘坂・焼き肉えびす社長の方がよっぽど経営者らしいじゃないか!?


そうは言っても、百貨店の火は消えて欲しくない。
「百貨店は文化」なのだから…。
三越伊勢丹ホールディングスの未来はどうなるんだろうか?

2008年4月に経営統合した三越伊勢丹ホールディングスは、
2010年9月にグループ初の大型プロジェクトとして「三越銀座店」を増床オープン。
2011年5月には初めて三越・伊勢丹両方ののれんを掲げた「JR大阪三越伊勢丹」が誕生した。
グループの2013年度連結営業利益として300億円を目標に掲げている。
(http://www.fashionsnap.com/news/2011-05-12/mitsukoshi-shinjuku-biccamera/)

JR大阪三越伊勢丹・ルクアに初日50万人が来店し、嬉しいスタートとなったようだ。

2011年05月05日 16:00 JST
 西日本旅客鉄道が、4日に開業した「大阪ステーションシティ」内の新施設
「JR大阪三越伊勢丹」と「LUCUA(ルクア)」の初日動員客数を発表した。
4日、9時15分から21時までの営業時間(レストラン街は23時まで)で、
「JR大阪三越伊勢丹」は約27万人、「LUCUA」には約23万人、合計約50万人が来場。
「大阪ステーションシティ」内は開業2日目を迎えてもなお、客足が絶えない様子だ。
拡大 5月4日、グランドオープンを迎えた「大阪ステーションシティ」。
なかでもファッションエリアとして注目を集めるノースゲートビルディングに位置する「JR大阪三越伊勢丹」と「LUCUA」には、
早朝から多くの来店客が訪れた。1800名超の列が両施設外にできたこともあり、
オープン時間を45分短縮した他、館外、館内ともに入場制限がかけられるなど終日大盛況。
4日は両施設合わせて40万人以上の来店客数を見込んでいたが、予測を大幅に上回る数の来店客数を迎えスタートを切った。
 オープン後、両施設の間にある玄関口「アトリウム広場」は入店待ちの人で溢れていたが、
「(広場内の)混雑は終日続いた。夕方になっても来店者は多く、
(館内に入るのを待つ人の)列が短くなっただけ」と同社担当者は話す。
「LUCUA」テナントで関西初の「TOPSHOP / TOPMAN」を5階にオープンしたT's(ティーズ)は、
来店客数が1万5千人を超えたことを発表。
DJイベントも開催されていたショップでは、限定Tシャツも1時間ほどで売り切れ、1日で約2500点のアイテムを販売した。
また、その盛況ぶりは大阪駅周辺にも影響を与えている。
大阪駅の隣、阪急百貨店うめだ本店でも入り口と出口を限定するなど、来店客が通常の休日よりも多いという。
翌5日の朝9時の時点で、「『JR大阪三越伊勢丹』と『LUCUA』の館外には、
昨日ほどではいがすでにオープン待ちの人の列ができている」と同社担当者。

「大阪ステーションシティ」を中心に、大阪・梅田界隈が一気に活気づいている。
(http://www.fashionsnap.com/news/2011-05-05/osaka-station-city-50/)

2 件のコメント:

  1. 太田(3期生)です。
    三越社長の発言に関する先生のご指摘を読み、「事業規定」とは
    「何を売っているのか」の認識でもあるのだなと思いました。
    子供のころ、百貨店に行くときには「よそ行き」用の服を着させらた
    ものです。
    サンダルやTシャツでは決して入ることの許されない空間でした。
    そこで売られていたのは、決して「商品」ではなかったように思えます。

    たとえば髙島屋の「薔薇の包装紙」などには10年や20年では決して手に
    入れることの出来ない、新参者を寄せ付けないだけの価値があります。
    中身はもちろん、「薔薇の包装紙」で包まれている、ということ自体に
    贈り主の気持ちを現すことが出来ます。

    金銭では買えない強みを持っているのですから、スーパーマーケットが
    コンビニやディスカウントストアに凌駕されることはあっても、百貨店は
    生き残るだろうと思っていたのですが、どうも甘かったようです。
    歴史に裏づけされた「格」というのは、一度手放してしまえば二度と
    手に入りません。
    しかし、三越社長の発言を聞く限りはそうした認識はなかったようです。

    どれほど大衆化が進もうとも、格差がなくなろうとも、最高の格のものは
    残しやすいはずであり、何を売っているのかの認識を間違わなければ
    価格競争に巻き込まれて淘汰されるようなことはないと思います。

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  2. 杉山@3期です2011年5月19日 6:18

    杉山@3期です

    百貨店、僕にとっては「デパート」ですね。
    子供のころ、たまに父が連れていってくれました。

    有楽町に行き、映画(007か寅さん)を見て、ショッピング
    そしてレストランで食事して帰る。

    あまり裕福ではなかったので、定番とは行きませんが、年2〜3回の
    ご褒美でした。今考えるとそういう体験をさせることも親の役割の
    一つのような気がします。

    「最高の格」というを言葉を受ければ事業規定、「顧客は誰か」
    において僕は既に対象外ということかもしれません。

    でもたまにちょっと背伸びをして、「おもてなし」を体験させる、
    ことも必要なのかも知れません。

    >商品納入業者に店頭に立たせ、販売員を務めさせる。
    >それは、家電量販店のやることだ。

    先生は上記のように書かれておられますが、これは百貨店が
    やっていたことを、家電量販店が真似たのではないでしょうか?

    問題はそこにその百貨店ならではの文化やおもてなしの心が継承が
    されてない、またできないということではないでしょうか?

    「コスト削減」「効率」を目的に自分たちの一番大切なものを
    おいてきてしまっているように思います。

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