2011年5月8日日曜日

三つの箱から世間を覗く(第72回)

「秋田犬の里 ~秋田県大館市~」(NHK「小さな旅」日曜AM8~)

○秋田県大館市は、あの忠犬ハチ公も生んだ「秋田犬の里」だ。
「里」が「里」であり続くのは、「里」を守っている人がいるからだ。

 秋田犬を育てている男性(60代かな)。
 本当に可愛がる人でないと譲らないという。
 譲った後も、どうしているかを、手紙・電話で確認している。
 (なんと面倒な、とも思うが、譲った方も、譲られた方も、それだけ
 可愛く、大切にしている人々ということだろう。)
 中には、きちんと飼っていない人もやはりいた。
 その時は、取り戻しに行ったという。

○その人が子供の時、
 戦時中、秋田犬を(全頭)供出せよとの軍命令が出た。
 防寒用の毛皮にするという!?
 彼がついていた秋田犬の「繁殖家」は、雄雌1組だけを山に隠した。
 この行為がなければ、秋田犬の血統は…。
 (日本の軍事官僚の話を聞く度に…。)

○「大切にする」「本気で守り通す」
 こういう「本物」の人々の存在の貴重さ!
 
 それを「地味に」伝えてくれる、NHKの「有難さ」。
 
 私たちは、こういう人たちを「尊敬」したい。
 こういう人たちに対して、社会が「感謝」の念を抱き続けて欲しい。
 こういう人たちの「後継者」が途絶えないことを心から願う。
 
「伝統工芸」を「受け継いでくれる人」がいなくなったら、
 輪島塗も、大館曲げわっぱも、南部鉄器も、江戸切子硝子も、…、…。 
「技」と共にある「心」の承継。
「技」は復元可能かもしれぬ。だが、
 一旦失われた「心」は…。 
 
 ゼミ掲示板で語られた「美意識・恥」も「同じ世界」の話だろう。

○日本犬の持つ「美質」は、まさに「日本人の美意識」そのものである。
 当然だ。日本人が「生み」「守って」きたのだから。

 少し、日本犬を知ってみたいかね?
 私も、戸川幸夫の「動物小説」を読んだだけだが。
『高安犬物語』、『かませ犬』

 彼の作品は、「動物」を描くことにより、「自然と人間」を教えてくれる。
『爪王』により、「鷹と鷹匠」を知り、「誇り」を意識させてくれた。

 「(新しい)知」と「感動(心を揺す振られる)」があれば、
「世界」「ものの見方」が変わる(かもしれない)。

1 件のコメント:

  1. 太田(3期生)です。
    戸川幸夫については先生からご紹介されるまでまったく読んだことがなく、
    イリオモテヤマネコの発見者であるということすら恥ずかしながら
    存じ上げませんでした。
    現在は新刊で入手することは難しいため、小学館・地球人ライブラリーの
    『高安犬物語/爪王』を中古で購入して読んでみました。
    この本は畑正憲氏の解説や動物ものの書籍紹介もあってなかなか良いです。

    滅びゆく種族とそれを命がけで守ろうとする人々に関するドキュメンタリー
    作品集であり、いずれも動物と人間との深い繋がりを描いているのですが、
    その繋がりようは動物愛護団体が知れば腰を抜かすような厳しいものです。

    戸川幸夫の作品に出てくる人々が守ろうとしているのは、決して「種」では
    ないと思います。絶滅しかけている「種」を人工的に結び付けて子孫を
    残す、といった発想はここにはありません。
    ただでさえ個体数が少ない種であるのにもかかわらず、彼ら
    (マタギや鷹匠)は厳しい訓練で犬や鷹を殺してしまうことすら
    あります。しかし、その中で生き残った犬や鷹は、極めて優れた子孫を
    残すことができます。
    マタギにとっての犬、鷹匠にとっての鷹は、生死をともにする
    パートナーであり、甘やかすことは文字とおり命取りになります。
    お互いに命や生活を預けていることが絶対的な信頼関係に繋がっており、
    その信頼関係の中での愛情はペットに注ぐ一方的な愛情とは全く異質な
    ものです。
    卑近な例ですが、家産を守るためとの大義の有無により子供の役割が
    変遷したことを連想いたしました。

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